■Vol.14星野哲郎(作詞家)                    1999年7月15日(木)
1925年9月30日生まれ山口県
 渥美清さんを追悼し 映画『男はつらいよ』がテレビに続き、映画館でも上映されている。オープニングで、あのメロディーに乗って、渥美さんの歌声が流れると、ファンは切々と伝わる寅さんの心情に涙する。作詞を担当した星野哲郎さん(70)=写真=は、40年にわたって4000曲の演歌を作詞した大御所だが、これだけ息の長い歌は珍しいという。映画とは別の、もうひとつの『男はつらいよ』物語。
 星野さんが、当時フジテレビプロデューサーの小林俊一氏から依頼を受けて、テレビドラマ「男はつらいよ」主題歌を作詞したのは昭和43年のこと。急いで書いてくれ、といわれ、ドラマの粗筋を基に4、5日で書いた。当時はファクスもないから、速達で送った。受け取 ったという返事だけで、何の注文もなかったから、テレビから渥美さんの歌声を聴くま で、本当に使われるのかな、と思ったくらいです」 星野さんが当時イメージした「寅さん」は、「けんかっ早くて、一生懸命。でも、やるこ となすことうまくいかない。いわば大変な人」というもの。それに加え、妹さくらへの甘 い夢を重ね、素直に表した。
 「2番に、♪目方で男が売れるなら、というのがあるけど、あれは当時、渥美さんが、 大きな人というイメージがあったからなんです。けんかも強いという印象もありました」作曲は山本直純氏が担当した。「やさしいメロディーで、クラシックの人がうまく演歌 を書いたって思いました。渥美さんの歌も、本職の歌手には出せない味わいがあっ て、仕上がりはよかったですね」 ドラマは好評のうちに終了。翌44年、松竹で映画化されたが、主題歌が日本クラウンからレコードとして発売されたのは同45年2月だった。
 「録音の立ち会い、打ち合わせで、十数回は渥美さんと会ったけれど、古風なくらい おとなしい人だった。ただ、(同じコメディアン出身の)坂上二郎さんの歌みたいにヒット しますかね、と話していたのを覚えている。そんなこと関係ないよ、と言ったんだけど、 売れたいと思っていたんでしょうか。渥美さんの歌は日常会話のように、スーッと入っ て、聴く人を疲れさせない。自然で素直な発声でした」 水前寺清子の「365歩のマーチ」、都はるみの「アンコ椿は恋の花」、北島三郎の「函 館の女」、小林旭の「昔の名前で出ています」などなど、星野さんの手になったヒット曲 は数多い。
 これまで「人生の応援歌」を書き続けてきた星野さんだが、特に「男はつらいよ」の♪ 奮斗努力の甲斐もなく--、のフレーズが好きだという。
「ガンバレ、ガンバレじゃないんです。一生懸命にやっても、うまくいかない。そのちぐ はぐさに寅さんの人生がある。そこが、聴く人ごとの人生と一緒に走ってくれる応援歌になるんです」「男はつらいよ」はこれまでにシングルで38万枚が売れているが、決して大ヒットで はない。 しかし、星野さんは、こう話す。
「セールスという数では一番ではないけれど、映画の主題歌としては世界に例のない長寿になった。その点では、私にとってはピカイチの作品です」

Copyright(C)2007 BLUESkY&AMATSUKAZE INC, All rights reserved